【アナタの知らない卓球の世界】Tリーグを支える"育成の名門"たち
スポニティ
0
0
109
Tリーグの華やかな舞台。その裏には、一般にはあまり知られていない“育成の最前線”が存在します。
それが、大学卓球界です。
多くのプロ選手たちは、大学という環境で技術と人間性を磨き、トップアスリートとしての道を切り拓いてきました。今回は、Tリーガーたちを輩出し続ける“名門大学”の実力と、その育成哲学に迫ります。
明治大学 ― 圧倒的実績を誇る卓球王国
宇田幸矢、宮川昌大、有延大夢など、数多くのTリーグ選手を送り出してきた明治大学。
その強さの背景には、五輪メダリスト・水谷隼をはじめとする名選手たちを育てた髙山幸信監督の独自の指導哲学があります。
「選手が一番嫌がるのは、上から一方的に指示されること」
髙山監督はそう語り、対話を重視した指導を徹底。選手の意見を尊重しながら、練習メニューも主将を中心に組み立てる“自律型”のチーム作りがなされています。
また、西調布にある寮と練習場が直結しており、夜10時からの自主練習も可能。2025年にはOBたちによる「明大卓球マネジメント」が設立され、後輩への継続的な支援体制も整備されました。
明治大学では「技術」だけでなく、「人間力」も磨かれる土壌が築かれているのです。
専修大学 ― パワーで切り拓く新時代
田添健汰、木村香純、出澤杏佳などのTリーガーが卒業し、2024年には高校生Tリーガー・首藤選手も進学を決めた専修大学。
この大学の最大の特徴は、一貫して追求する「パワー卓球」の哲学です。
男子の高宮啓監督は、「強打が脅威になるには、確率よく決められなければ意味がない」と語り、数年前から本格的なウェイトトレーニングを導入。特に肩や臀部を重点的に鍛えることで、力強くキレのあるボールを実現しています。
女子チームでも加藤充生樹監督が「卓球の男子化」を掲げ、フォア主軸の練習を毎日行うことで、自らの力で“打ち抜く”スタイルを徹底。
「相手のスピードや回転に頼る戦術では、接戦の最後に1本を取りきれない」
この考えに基づいた指導は、選手に「勝ちきる力」を育てています。
日本大学 ― 伝統と革新が生んだ“復活”
1926年創部の伝統を誇る日本大学は、2023年、実に38年ぶりに春季関東学生リーグで優勝を果たしました。
そして、エースの小林広夢選手は2025年に金沢ポートと契約し、Tリーグデビューを果たします。
快進撃の裏にいるのが、異色の指導者・氏田知孝監督。卓球界とは無縁のキャリアから監督に就任した氏田氏は、選手とともに勧誘活動を行うなど、地道な信頼構築を重ねてきました。
チーム運営の柱に据えるのは「自主性」。選手一人ひとりが考えて行動するスタイルを徹底し、伝統校に新たな風を吹き込んでいます。
専用卓球場に掲げられたのは「心技の練磨」「闘魂の振起」という理念。
「10年後、20年後も強い日本大学であるために」
という長期的なビジョンのもと、伝統と現代的アプローチを融合させた育成が続けられています。
三者三様の哲学が、未来をつくる
・明治大学の組織的かつ自律的な育成体制
・専修大学の革新とパワー重視の戦略
・日本大学の伝統と自主性の融合
それぞれが独自の哲学を貫き、日本卓球界の未来を担う選手たちを育てています。
Tリーグ観戦の際は、ぜひ選手たちの出身大学にも注目してみてください。
その背景には、緻密で多様な“育成の物語”が広がっているはずです。
(文・富永陽介)










