【ツギクルTリーガーの通信簿】新天地で覚醒の兆しあり 面手凛
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ノジマTリーグ2025-26シーズンは、男子のT.T彩たまが6連勝、女子の日本生命レッドエルフ(以下日生RE)が4連勝を飾り、それぞれ首位に立っています。一方で、男子は昨シーズン3位の岡山リベッツが最下位、女子は同1位の日本ペイントマレッツ(以下ニッペM)が4勝4敗の3位となかなか調子が上がりません。いずれも地力のあるチームで、シーズンの深まりとともに調子が上がってくると思われますので、今は我慢の時でしょう。
さて、今回の通信簿は、木下アビエル神奈川(以下KA神奈川)から、日生REに移籍した面手凛(めんで・りん)選手にご登場いただきます。
KA神奈川時代の面手選手の通算成績は、シングルス2勝7敗、ダブルス2勝1敗とお世辞にも主力選手とは言えないものでした。山陽学園中学在学中の2021-22シーズンにTリーガーデビューを果たし、当時日本のエースだった石川佳純さんといきなりダブルスを組み勝ち星を挙げるなど、チームから大きな期待をかけられていたものの、選手層が厚く、常に優勝争いを演じていたKA神奈川では出場機会をつかむことすら難しい状況が続いていました。周囲からもその潜在能力の高さを認められていましたし、国内大会では常に上位入賞を果たし、国際大会での優勝も数多く手にするなど、実際に実績も残しているというのにTリーグではなかなかブレイクすることができない。そのもどかしさを痛感していたのは、誰より面手選手本人だったのだと思います。
こうした状況を打破するために、面手選手は大胆な転身を図ります。Tリーガーデビュー以来4シーズン在籍したKA神奈川から、その最大のライバルと言っていい日生REに移籍することを発表したのです。野球に例えると巨人から阪神に移籍するような、「ありえない」移籍でしたが、この転身は今のところ良い結果をもたらしているようです。
移籍後、程なくして行われたWTTユースコンテンダー・ヘルシンボリのU19シングルスで優勝。そして、過去2年ベスト8止まりだったインターハイシングルスで見事に優勝を果たしたのです。準決勝で髙森愛央選手(四天王寺高校、ニッペM)、決勝で山室早矢(桜丘高校、九州カリーナ)のTリーガー2人を破っての優勝は、来るべき2025-26シーズンでの面手選手の「覚醒」を予感させるものでした。
そして迎えた今シーズン、面手選手は開幕から積極的に起用され、チームマッチ数7つのうち、4試合のシングルスに出場しています。勝敗は2勝2敗と、さすがに簡単には勝たせてもらえないながら、インターハイ決勝の相手である山室選手、4連勝中だった京都カグヤライズのエース・出雲美空選手を破るなど「大物食い」の片鱗を見せています。また負けた2試合はいずれもゲームカウント2-3の惜敗であり、こちらも実力が向上していることの証左でしょう。
右シェークドライブ型を戦型とする面手選手は、従来からバックハンドの正確さ、力強さに定評がありましたが、インターハイに臨むにあたって、フォアハンドを徹底的に強化したそうです。特にカウンターを重点的に練習したそうで、フルゲームにもつれ込んだ髙森選手との準決勝、カットマンの山室選手と対戦した決勝では、フォアからの強打が勝負を決めました。Tリーグでの活躍も、確かな技術の裏付けがあってこその結果で、今後のさらなる躍進にも期待できそうです。
面手選手の最大のライバルは、日本卓球界のエース・張本美和選手ですが、この2人が切磋琢磨してTリーグや各種大会で熱戦を繰り広げることは、日本卓球界のレベルを向上させるとともに、注目度も高めていくことにつながります。面手選手の「覚醒」が現実となる日を楽しみに、応援していきましょう。
面手凛(めんで・りん)
2007年12月31日岡山県生まれ。山陽学園中学を経て、現在山陽学園高校在学中。2024、2025年全日本卓球選手権大会ジュニアシングルス準優勝。2025年インターハイ女子シングルス優勝。昨季まで4シーズン在籍したKA神奈川から今シーズンは日生REに移籍。
(文・江良与一)










