【アナタの知らない卓球の世界】信じる力が世界を変えた――スウェーデン卓球の真髄

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【アナタの知らない卓球の世界】信じる力が世界を変えた――スウェーデン卓球の真髄

2024年パリ五輪、卓球男子シングルス決勝。
2回戦で世界1位・王楚欽を破った世界ランク26位のトルルス・モーレゴードが、銀メダルを獲得した。

人口わずか1000万人の小国スウェーデン。
しかしこの国は、1989〜1993年に世界選手権団体3連覇を達成し、2000年には中国以外で最後の団体優勝を飾った。
ヤン=オベ・ワルドナー、ヨルゲン・パーソン――数々の伝説がこの国から生まれた。
なぜ小国から世界を驚かせるスターが育つのか。その秘密は、独自の育成哲学にある。


自己主張が育む創造性
スウェーデンの育成で最も特徴的なのは、「自己主張」を重んじる文化だ。選手は指導者に従うのではなく、納得するまで意見を交わす。コーチが強制することはなく、対話の中から最善を探る。

スウェーデンリーグでプレーした英田理志氏は語る。
「中高生がレジェンドに『違うよ』と平然に言い返していた。日本では考えられない光景だった」。
この自由な対話が、選手一人ひとりの発想力と主体性を育てる。



科学的アプローチと個性の尊重
もう一つの柱は、技術に対する科学的分析だ。スウェーデンでは、グリップを「フォア用」と「バック用」に分類し、それぞれに適した技術を体系化している。選手は自分の得意技に合わせて最適な握りを選ぶ。

同じシェークハンドでも、選手ごとに微妙に形が違う。それは個性の表現であり、型にはまらない創造性の象徴でもある。

ワルドナーの遊び心、パーソンの闘志、リンドの鋭いバックドライブ。この多様なスタイルこそ、スウェーデンが個性を尊重する結果だ。


「信じる力」がもたらした復活
ワルドナー、パーソン引退後のスウェーデンは一時低迷した。だが2020年、ヨルゲン・パーソンが男子代表監督に就任し、再び光を取り戻す。
パーソンが選手に伝えたのは「信じること」だった。

「中国を倒せると信じること。それがすべての始まりだ」。
この言葉が、挑戦を恐れないスウェーデンの原動力となった。

その結果、2024年パリ五輪。
モーレゴードが世界1位を破り、再びスウェーデンの名を世界に刻んだ。

スウェーデンが強い理由は、偶然ではない。自己主張を重んじ、科学で裏づけ、個性を伸ばし、信念で貫く。その哲学が、限られた人口でも世界を驚かせる力を生む。
スウェーデンの育成は、画一化を目指す時代に一石を投じる。「個を信じる」ことが、世界の舞台で勝つための本質なのだ。


(文・富永陽介)


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