【ツギクルTリーガー】ポスト「黄金世代」のエースに 赤江夏星
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ノジマTリーグ2022‐2023シーズン終盤からプレーオフにかけて、日本生命レッドエルフがエース早田ひな選手のダブルスパートナーに抜擢したのが赤江夏星選手。
レッドエルフには早田選手と「みまひなペア」を組んで、日本選手権5連覇という偉業を成し遂げた伊藤美誠選手がいます。日本最強の「みまひなペア」を起用しなかった理由はいくつか考えられますが、最大の理由は赤江選手の「脱皮」を促すためです。
赤江選手は、ジュニア以下のクラスでは数々の国際試合で上位に食い込む活躍を見せてきました。また、2022年のインターハイ女子シングルスで優勝するなど、同世代の日本人選手の中ではトップクラスです。しかし、世界でも屈指のハイレベルを誇るTリーグでは苦戦続きでした。2022-23シーズンの戦績はシングルスで2勝4敗、ダブルスで2勝2敗。Tリーグ4シーズン通算ではシングルス4勝8敗、ダブルス13勝11敗と、現時点では「無難な中堅選手」とでもいうべきポジションです。ジュニア時代の活躍を鑑みれば、歯がゆいという一言に尽きるでしょう。
160cmの高身長と長いリーチという身体的優位性、強力なドライブを連続して叩き込み続けるプレースタイルは魅力十分ながら、どうしても「あと一歩」が足りません。レッドエルフを率いる村上恭和総監督は、2022-23シーズンの終盤戦で、荒療治を施します。負ければ、プレーオフ進出の望みが断たれ、チーム5連覇の夢が潰えるという大一番、日本ペインツマレット戦のダブルスで早田選手のパートナーに起用したのです。
チームの運命を左右するこの試合の相手は芝田沙季、大藤紗月両選手のペア。「みまひなペア」を何度も脅かしたことのある実力者ペアです。「一度も試さないで崖っぷちに来て本番に使った」(村上総監督)という急造ペアがどこまで戦えるのか?そんな不安は早くも第1セットで的中し、10-11で落としてしまいます。しかし、結果的にはこの第1セットの接戦は、早田・赤江ペアの一体感の醸成を進めたようで、続く第2、第3セットは序盤からリードを奪い、そのまま危なげなく押し切って勝利。チームもプレーオフへの進出を決めました。
続くプレーオフセミファイナルでも、早田選手と組んでダブルスに出場し2-1で競り勝ってチームのファイナル進出に貢献。残念ながらファイナルでは長﨑美柚・張本美和ペアに敗れたものの、ビッグマッチでの2勝は赤江選手には大きな一歩となりました。
現在の日本女子卓球界は伊藤美誠、早田ひな、平野美宇の「黄金世代」が圧倒的な成績を残し続けています。こうした強い世代の次の世代は得てして低迷してしまいがちです。「ポスト黄金世代」には長﨑美柚選手や木原美悠選手、張本美和選手などが控えており、ライバルは多いですが、赤江選手は「みまひな」両選手から、日々薫陶を受けられるというアドバンテージがあります。そして、赤江選手の成長は「ポスト黄金世代」を「さらなる黄金世代」に進化させる可能性があるのです。2023-24シーズンの赤江選手に注目し、応援していきましょう。
赤江夏星(あかえ・かほ)
2004年7月3日兵庫県生まれ。中学から大阪の名門貝塚二中に進学し、高校も大阪の香ヶ丘リベルテ。ジュニアアシスト卓球アカデミーで研鑽を積み、高校在学中の2019-20シーズンから日本生命レッドエルフに所属。戦型は右シェークドライブ型。
(文・江良与一)