【ツギクルTリーガー】ブロンズコレクター返上を目指して 横谷晟
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今回は静岡ジェードの主力選手として期待がかかる、横谷晟(よこたに・じょう)選手を紹介いたします。
横谷選手は2001年5月に岐阜県の山県市で誕生しました。下に弟と妹が一人づついる3人兄弟の長男です。
3歳から卓球を始めた横谷選手は、小学校時代から全国大会で上位入賞の常連でしたが、残念ながら優勝経験はなし。そんな状態からの飛躍を胸に、中学からは強豪の愛知工業大学附属中学に進学します。中学時代、団体戦の一員としてチームの全国大会3連覇には貢献しましたが、個人戦のシングルスではベスト4が最高位。そのまま愛知工業大学附属高校に進学しますが、ここでもチームの一員として団体戦2連覇(2018年、2019年。2022年はコロナ禍のため大会中止)には貢献したものの、個人としてはシングルスベスト32、ダブルスベスト4が最高で、どうしても「優勝」の二文字を手にすることはできませんでした。
レジェンド水谷隼さんから、「身体能力とボールタッチが抜群」と激賞されるなど、十分すぎるほどの素質を持ちながら今ひとつ殻を破ることができていなかった横谷選手は、インターハイが中止になってしまった2020年から大学1年時の2021年にかけては本人曰く「廃人のような生活を送っていた」そうです。ちょうどこのタイミングで日本代表候補から外れてしまい、また大学生になったことでついつい卓球以外の誘惑が増え、自堕落になっていってしまったそうです。いくら頑張っても「ブロンズコレクター」止まりという閉塞状況の中で、一瞬、高い志を捨ててしまったようです。
そんな横谷選手を卓球に引き戻したのは、愛知工業大学卓球部の森本耕平監督。「卓球に打ち込む時間を増やそう」という目論見の下、横谷選手をドイツのブンデスリーガに送り込みました。所属チームは2部のTTC GW Bad Hammという決して強くはないチームでしたが、横谷選手が負ければチームも負けてしまう、という責任の重い立場で数々の修羅場を潜り抜けました。負ければボロクソに叩かれるという彼の地特有の洗礼も数多く受けた横谷選手は、恵まれた身体能力に精神的な強さが加わり、世界選手権の代表選手に返り咲くことができました。
そして、満を持する形で2022-23シーズン途中から木下マイスター東京に入団します。残念ながら同シーズンはシングルス、ダブルスともに0勝1敗に終わり、Tリーグでの勝利はお預けとなりました。
2023-24シーズンからは静岡ジェードに移籍しました。苦戦が続く静岡ジェードにとってはブンデスリーガで「自分が負ければチームが負ける」という修羅場を数多く経験してきた横谷選手は心強い存在でしょう。そして、Tリーグでギリギリの勝負を数多く経験し、その上で勝利を積み重ねていけば、いつしか「ブロンズコレクター」というあまり嬉しくない称号を返上する日がやってくるのではないでしょうか。横谷選手が、Tリーグでの栄冠をつかむとともに、パリオリンピックでシルバー以上のメダルを獲得することを期待して応援していきましょう。
横谷晟(よこたに・じょう)
2002年5月1日岐阜県生まれ。現在愛知工業大学に在学中であるとともに、静岡ジェードにも所属する「二刀流Tリーガー」。戦型は右シェークドライブ型。身体能力の高さとボールタッチの巧みさには定評がある。個人としての優勝経験はまだない「未完の大器」。
(文・江良与一)