【ツギクルTリーガー】勝って、勝って「日本のエース」の座を奪う! 及川瑞基
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先週末から開幕したTリーグの2023-24シーズン。男子は開幕戦から前シーズンリーグ1位の木下マイスター東京(以下KM東京)とプレーオフを制した琉球アスティーダが激突し、ヴィクトリーマッチで勝敗が決するという劇的な戦いが繰り広げられました。
この一戦で、一際存在感を示したのが、KM東京の及川瑞基選手。第3マッチで難敵吉村真晴選手と息詰まるような接戦を演じて制すると、2勝2敗で迎えたヴィクトリーマッチにも出場。残念ながらこの戦いは、日本のエース張本智和選手に敗れてしまいましたが、2連敗して後がない状態での第3マッチ、そして文字通り決着の場であるヴィクトリーマッチというとてつもないプレッシャーがかかる二つの場面に登場し、チームのエースとしての信頼の高さを感じさせました。
及川選手は、今までの経歴から考えると、実は「このくらいはやって当たり前」の選手なのです。さらに言えば、ヴィクトリーマッチに出ると決まった瞬間に、相手選手が半ば勝利を諦めるくらいの選手でなければならないのです。
1997年6月に宮城県で誕生し、5歳の頃からラケットを握った及川選手はスポーツ万能で、サッカーや野球の合間に卓球をやるような状態だったため、なかなか「進路」が定まりませんでした。しかし、優勝が期待されていた、ある大会で、あっさりと負けてしまったことで、当時のコーチであった張本選手のご両親にひどく叱責され、そこから本気で卓球に取り組むようになります。卓球に専念できる環境を求めて青森山田中学に進学。3年時にはドイツのブンデスリーガに挑戦するとともに、全国中学校卓球大会シングルスで準優勝と頭角を現しはじめます。青森山田高校進学後もブンデスリーガへの挑戦を継続するとともに、インターハイなどで数々の好成績を修め、レジェンド水谷隼選手の後継者として注目を浴びるようになります。専修大学進学後の2016-17シーズンからはブンデスリーガ1部の強豪ケーニヒスホーフェンに在籍し、2018-19シーズンには 「ドイツの皇帝」ことティモ・ボルを破るなどの活躍を見せました。ブンデスリーガでは「堅実に相手をみながら戦術を考え的確に対処する」プレースタイルも身につけました。
一方でこの時期、各種の大会での成績はやや伸び悩みを感じさせました。「大学生」というカテゴリーでは何度かシングルスで優勝も飾っていますが、「全日本」レベルでは目立った戦績がありません。また国際大会でもベスト4で頭打ちでした。
大学卒業後の2020-21シーズンからKM東京に加入した及川選手は、シーズン19勝5敗という素晴らしい成績で最優秀選手賞を受賞しました。また2020年の全日本選手権では、三部航平選手と組んだダブルスで初優勝を飾りました。さらに、2021年の全日本選手権では念願のシングルス優勝を飾ります。
名実ともに日本の頂点を極めた感のあった及川選手ですが、残念ながら、現時点では張本選手、戸上隼輔選手に続く3番手という位置付けです。及川選手に今一番求められるのは何より「勝利」です。開幕戦で敗れた張本選手に勝つことはもとより、未だ果たせていない国際試合での優勝を勝ち取ること。こうした勝利の経験こそが、パリ五輪を控えた日本選手団の底上げにつながるのです。及川選手が「ただのベテラン選手」ではない活躍を見せてくれることを期待して応援していきましょう。
及川瑞基(おいかわ・みずき)
1997年6月26日宮城県黒川郡大和町生まれ。青森山田中学・高校を経て専修大学に進学し、大学卒業後の2020-21シーズンからKM東京所属。戦型は右シェークドライブ型。ブンデスリーガで仕込みの「考える卓球」も持ち味。
(文・江良与一)