ノジマTリーグ2023-24は第2節に入り、ますます熱い戦いが繰り広げられています。

今回は、九州アスティーダの主力として飛躍が期待される野村萌（のむら・もえ）選手を紹介いたします。


野村選手は2001年3月に愛知県で誕生しました。黄金世代と言われる、伊藤美誠、早田ひな、平野美宇選手とは同学年です。母と祖母の影響で4歳からラケットを握った野村選手は幼少期から愛知県では無敵を誇り、全国大会の常連でした。ただし、全国大会の壁は厚く、中学3年時に全国中学体育大会でベスト16に残ったのが最上位と、苦戦しました。

そんな野村選手がブレイクしたのは、愛知みずほ大瑞穂高校入学後でした。3年時のインターハイ女子シングルスで圧倒的な成績で優勝、ダブルスでも準優勝と、一気に「黄金世代」の一員と目されるようになりました。

勢いそのままにトップおとめピンポンズ名古屋（以下TOP名古屋）に2018-19シーズンから加入した野村選手でしたが、ここで二度目の挫折を味わいます。出場はシングルス2試合、ダブルス1試合のみで全敗に終わったのです。

2019年は活動の舞台を社会人のデンソーに移します。ここで全日本社会人大会優勝など、格の違いを見せつける活躍を見せ、復活の狼煙をあげました。デンソー時代にはまた、チームのキャプテンを任されるなど、精神的にも大きく成長しました。

心身ともにバージョンアップした野村選手は、2022-23シーズンから九州アスティーダに加入し、Tリーグに復帰します。デンソー時代の実績から主力の選手として抜擢を受けた野村選手はシングルス19試合、ダブルス5試合に出場します。しかしながら、シングルス8勝11敗、ダブルス0勝5敗と残念な成績に終わりました。

2023-24シーズンのチーム開幕戦となる日本生命レッドウルフ戦では、第3マッチというチームの命運を握るポジションを任され、笹尾明日香選手と対戦。幸先よく第1ゲームを制しますが、その後の3ゲームを連続して落として敗戦。チームも黒星スタートとなりました。

野村選手のプレーの特色は、両ハンドどちらからでも強力なドライブが放てることですが、自信を持っているのはバックハンドからの強打です。それゆえ、台の真ん中に構えた状態からサーブを出し、フォア、バック双方に対応できる体勢を保ちつつ、バックからの3球目攻撃で得点を狙うというスタイルをとっています。女子とは思えぬほどのスイングスピードで、強烈なドライブを連発する超攻撃的なラリーを見せることもあります。また、自身試合中のプレーをほとんど記憶しているというクレバーさも野村選手の武器です。過去の対戦の膨大な記憶から、相手の次の一手を読んで裏をかくことにも長けているのです。

過去の実績、豊富な経験値を考えれば、黄金世代のビッグ3に割って入るだけの素質は十分に持ち合わせていると思われますが、Tリーグの成績を見る限り、現在野村選手にとっては3回目の試練の時を迎えているようです。Tリーグの試合に出続けること、そしてそこで勝利し続けることこそが、野村選手の飛躍のためには一番必要なことでしょう。


野村萌（のむら・もえ）
2001年3月11日愛知県生まれ。愛知みずほ大瑞穂高校卒業後、2018-19シーズンにTOP名古屋に入団。2019〜22年には社会人のデンソーに所属し、2022-23シーズンから九州AでTリーグ復帰。戦型は右シェーク異質攻撃型でバックハンドからの多彩な攻撃が魅力。


（文・江良与一）