【今さら聞けない卓球用語】伊藤美誠選手の強さの秘密を独自解説!
スポニティ
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スポニティによる週次連載記事の第15回、今回は伊藤美誠選手について、その独特のプレースタイルや強みについて独自に解説していきます。
福原愛の影
伊藤選手は、全日本選手権や世界選手権での福原選手が持つ史上最年少勝利記録を次々と塗り替えてきました。
また、卓球も当初は今のような変則的なプレーやフォームではなく、もっとオーソドックスなものでした。
意識していたのかどうかはわかりませんが、フォームも特にバックハンドがどことなく福原選手に似ていたような気がします。
そういったことから、国際大会に出始めの頃は、まだ福原選手の後継者といったイメージから脱却しきれていなかった、まだ伊藤選手独自のアイデンティティを確立してはいなかったと思います。
大魔王になるまで
中国では伊藤選手は大魔王と呼ばれています。それだけ中国にとって伊藤選手が脅威であるということから中国メディアがそう呼び始めたそうです。
ただ福原選手と似たようなプレーをしているだけではそのようにはなれません。
なぜ伊藤選手は大魔王と呼ばれるほどの脅威になれたのでしょうか。
伊藤選手が中国選手と対峙する上での決定的な強みは、表ソフトラバーとスマッシュです。
中国選手の強みはやはり安定感と女子選手離れしたパワーのあるドライブですが、どうしても小柄な選手の多い日本人では、中国選手と同じことをしても勝てないのです。
伊藤選手は、表ソフトラバーによって、中国選手のパワードライブのスピードや回転を殺したり、また時には表ソフトラバーでのミート打ちによって、中国選手の得意なドライブ対ドライブのラリーをさせず防戦一方にさせることで、中国選手の強いところを封じ込めているのです。
またスマッシュも伊藤選手独自の持ち味です。スマッシュはドライブと比べて決定力がある反面、ミスをしやすいというデメリットがあり、現代卓球では、よほど高く浮いたボールでない限り、安定感のあるドライブを使う選手がほとんどです。
しかし、伊藤選手は非常にコンパクトなスイングでスマッシュをより安定して打つことができます、これは福原選手にはなかった特徴であり、中国にもこのようなプレースタイルの選手はほとんどいないでしょう。
こういった部分が、伊藤美誠対策を困難にさせる理由であり、中国にとって脅威を感じる選手=大魔王たるゆえんなのです。
不調の理由
ただ、ここ最近は全日本選手権で6回戦で負けてしまうなど、精彩を欠く場面も見受けられるようになりました。
国際大会や国内でのパリ五輪選考など、過密日程によって心身ともに疲弊しているなどの影響もあると思いますが、プレーに変化があったと思う点もあります。
それは、ほんの少しですが、台から距離を取るようになったことです。
確かに台から距離を取ることによって、スイングを少し大きく取れるようになったり、また踏み込んで打つことができるので、ボールに威力が出るのですが、台から距離を取ると、表ソフトラバーやスマッシュを活かすためにボールの上がり際を捉えることが難しくなってしまいます。
経験を積む中で欠点を改善させるためにプレーを変化させたのだと思いますが、これによって伊藤選手本来のプレースタイルが少し崩れてしまったのではないかと思います。
皆さんの意見も是非コメント欄にてお聞かせください。
文:干場卓哉(ホシバタクヤ)