【今さら聞けない卓球用語】なぜ日本はイランに負けたのか? 先日のアジア競技大会について解説!
スポニティ
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スポニティによる週次連載記事の第19回、今回は先日開催されたアジア競技大会の男子団体について解説したいと思います。
イランの勝利は奇跡ではない
今年9月22日から10月2日まで、中国杭州でアジア・オリンピック評議会(OCA)が主催するアジア競技大会が開催されました。ちなみに今年の9月2日から10日まで韓国の平昌で行われたのはアジア卓球連合(ATTU)が主催するアジア卓球選手権(以下、アジア選手権)です。
男子団体の部では、日本はイランに0-3と敗れてしまいましたが、この結果について、元卓球日本代表の水谷氏は「X」(旧ツイッター)にて、「イランが日本に勝つのって日本が中国に勝つより奇跡なことです。ことでした」と言及しました。
日本とイランは直近で何度か対戦しており、2022年に中国の成都で行われた世界選手権や今年9月2日に行われたアジア選手権では、両試合とも日本が3-0で勝ってはいるものの、イランから見れば内容的には非常に肉薄した試合でした。
また、今年のアジア選手権では男子シングルスで張本選手が2回戦でイランのNOROOZI Afshin選手に敗れています。
こういった幾度もの接戦を経て、イランは日本を「現実的に倒せる相手」として徐々に認識していき、日本選手に対する具体的な対策や戦術が奏功し、今回の結果につながったのではないかと思います。
世界で進む技術の「平均化」
近年、今までの卓球の歴史において、ほとんどその名を聞くことのなかったインドや中東などの国の選手が力をつけてきています。
これは卓球の技術の進歩が世界的に進んでいることの証拠です。なぜそのようなことか起きているのかというと、日本でもTリーグが勃興したように、世界各地で卓球のプロリーグが盛んになったことや、また新たにWTTシリーズが始まり毎月のように国際大会が開かれ、世界中の選手と対戦する機会が増えたこと、あるいはインターネット環境の急速な発展によってほとんど誰でも世界最先端の卓球の技術にアクセスすることができるようになったことなどが要因と考えられます。
これによって、特に男子では極端に実力差がある国や選手というのが少なくなってきています。もはや、伝統的に強い国だからとか世界ランクに差があるからといった「固定観念」は捨てなければなりません。
今回のイランに関しても、もし心のどこかで「格下だから」、「イランは卓球が強い国じゃない」といった油断や慢心があったのであれば、今後はどの国に対してもそのような気持ちは捨てて挑まなければいけないでしょう。
「全員で勝つ」卓球を
水谷選手から張本選手へ世代交代が進むと同時に、日本男子卓球界は「エース張本を中心としたチーム作り」を行ってきました。決して張本選手が頼りないからというわけではありませんが、やはり中国に勝つ、もとい団体戦で安定したチームを作るためには、「チーム力の底上げ」が必要です。
張本選手に頼るだけでは、競争心が生まれず、お互いに切磋琢磨する効果も生まれません。「張本が負けても俺がいる」くらい対等なレベルの選手を育成し、それが張本選手への刺激にもなっていき……、という良いライバル関係の中における好循環――今の女子は伊藤、平野、早田選手たちを中心にそれができています。その正のスパイラルを生み出せるかが、今後の男子卓球の課題になるでしょう。
皆さんの意見も是非コメント欄にてお聞かせください。
文:干場卓哉(ホシバタクヤ)