【ツギクルTリーガー】日本人初のイタリアリーグ経験者、「準地元」で奮戦中 五十嵐史弥
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ノジマTリーグの2023-24シーズン男子は首位琉球アスティーダと2位木下アビエル東京が勝ち点差1で激しい首位争いを繰り広げ、3位につけた岡山リベッツも虎視眈々と首位を狙う熱戦が続き、下位3チームとはやや差が開き始めました。このまますんなり上位3チームがだけが走ってしまっては面白くありません。下位チームの奮起で、最後の最後までもつれる展開を期待しましょう。
さて、今回は今シーズンからTリーグに参戦し、12月20日時点では残念ながら最下位に沈んでいる金沢ポート(以下金沢P)の主力選手にして波乱の卓球人生を送り続けている、五十嵐史弥(いがらし・ふみや)選手を紹介いたします。五十嵐選手は1999年9月に山形県で誕生しました。小学校時代に、長井ジュニアスポーツ少年団に入団し、卓球を始めました。家族に卓球経験者はおらず、母親の知り合いのコーチがいたという縁だけで卓球を始めたという異色の「きっかけ」の持ち主です。小学生時代に数々の全国大会で好成績を修め、中学はより良い練習環境を求めて名門青森山田中学に進学します。しかし、そのまますんなり青森山田高校進学ということにはなりませんでした。青森山田高校といえばレジェンド福原愛さん、水谷隼さんをはじめ数々の名選手を輩出した強豪高ですが、残念ながら五十嵐選手の高校進学時は卓球の強化を終了してしまっていたのです。一旦地元山形の中学に転校した後、石川県の遊学館高校に進学しました。ここでコーチである金谷昌宣先生と出会い、「頭で理解してから体に移す」という指導を受けたことが、卓球選手としての飛躍に繋がりました。高校3年時のインターハイでは男子ダブルスで3位入賞を果たすとともに、遊学館高校を団体準優勝に導く活躍を見せました。
高校卒業後は早稲田大学に進学。全日本学生卓球選抜大会男子シングルスベスト4、関東学生卓球選手男子シングルス優勝など個人として数々の実績を残すとともに、4年時には主将としてチームを牽引し、全日本大学総合選手権でチームをベスト8に進出させました。卒業後は、実業団のチームに進む予定でしたが、そのチームが解散してしまい、進路が白紙に。
そんな空白を一気に埋めることになるのが、日本人として初のイタリアリーグへの参戦でした。元々は日本人選手も数多く在籍経験のあるドイツ・ブンデスリーガを志望し、2021年当時クニックスホーフェンで監督を務めていた青森山田中学時代の恩師、板垣孝司さんに相談したそうです。板垣さんからは、当時のコロナ流行下の状況ではブンデスリーガへの参加そのものが難しいという説明とともに、イタリアリーグのアプアーニア・カラーラ入りを勧める返事が届きます。イタリアのプロリーグは創立20年余りで、ブンデスリーガほどレベルは高くありませんが、カラーラは優勝5回を誇る強豪チーム。欧州の強豪選手も数多く在籍します。言葉もろくに通じない状況ではありましたが、五十嵐選手はイタリア行きを決意。厳しい環境下に自身を置くことで、一つ殻を破りたいという強烈な欲求を感じる旅立ちでした。同時に2021-22シーズンからT.T彩たまにも入団し、Tリーガとしての歩みも始めました。そして2023-24シーズンからは、高校時代を過ごした「準地元」金沢を本拠とする金沢Pに入団しました。現時点までのTリーグでの戦績はシングルス2勝3敗、ダブルス4勝16敗と苦戦続きですが、さまざまな逆境を経験し、それを乗り越えてきた五十嵐選手は、必ずや飛躍を遂げることでしょう。その日を期待して応援していきましょう。
五十嵐史弥(いがらし・ふみや)
1999年9月9日山形県生まれ。長井スポーツ少年団で卓球を開始し、青森山田中学、遊学館高校、早稲田大学を経て、2021-22シーズンよりT.T彩たま入団。2021年には日本人初となるイタリアリーグ、アプアーニア・カラーラ入団も果たす。23-24シーズンから金沢Pに移籍。戦型は右シェークドライブ型で、182cmの長身を生かした強烈なドライブが魅力。
(文・江良与一)