今週はTリーグの試合予定はありません。そこで、今季のTリーグを総括しつつ、いち早く来季の展望などに迫っていきたいと思います。今回の当連載ではその男子編をお送りします。



海外選手の起用方法を考え直すシーズンに

今シーズンは、いくつかのチームが積極的に海外選手を獲得してチームの戦力を補強しましたが、ただ単に強い選手を獲得すれば勝てるようになるというわけではありませんでした。

その問題が顕著に表れたのが「ダブルス」です。シングルスで実績のある選手は言わずもがな、ダブルスで実績のある選手でさえ、新しい人と組んだダブルスですぐに結果を出すのは難しいものです。

琉球アスティーダは、2015年の世界選手権男子ダブルスで銀メダルを獲得したシュウユウ選手や、2023年1月のWTTコンテンダードーハ大会の男子ダブルスで優勝したユウジヤン選手を獲得しましたが、両選手ともダブルスで思うように結果を残すことはできず。そして、この終盤戦にきて新しいペアを作るなど、琉球アスティーダはシーズンを通してダブルスに苦戦し続けることになってしまいました。

金沢ポートもまた海外選手を多く獲得したチーム。なかなかダブルスで安定したペアを作ることができなかったため、シングルスで常に相手エースを含む2人を倒さなければならない戦いを強いられることが多くなりました。エースペアがいれば、ダブルスと相手エース以外の選手を一人倒して、最後の1セットマッチに賭けるという戦い方も可能となりますが、ダブルスが振るわないと一気に苦しくなります。

結局、成績表を見てみると、ダブルスで好成績を収めている選手は、同じ人とずっとペアを組んでいる傾向が強く出ている印象です。もちろん、単に長く組めば勝てるようになるというものでもありませんが、今シーズンの結果を見るに急造ペアは思うように成果を上げられなかったと言えるでしょう。

このように、ダブルスにおいては、スポット的に強力な海外選手を投入しても、必ずしも勝てるペアを作れるものではありませんので、来季以降、海外選手を迎えるチームは、より計画的な起用方法を考えた上での獲得が必要になってくるでしょう。


来季は「均衡化」が進む

昨シーズン、勝利数1位だったハオシュアイ選手ですが、今シーズンでは現在8位タイに甘んじています。もしハオシュアイ選手が弱くなったのなら、総じてどの選手にも勝てなくなるはずですが、それでも高い勝利数を維持していることから、特にハオシュアイ選手に勝った曽根翔選手、田中佑汰選手、横谷晟選手、松島輝空選手など、日本の若手選手がTリーグを経て強くなっている、あるいは中国選手のプレースタイルやボールに慣れ始めてきたと捉えるべき数字でしょう。

Tリーグには世界トップクラスの選手たちが集まってきています。そういった選手たちと試合を重ねていく中で、日本の若手選手たちもまた世界のトップクラスに近づきつつあると言えます。

来季に突然その差がゼロになるとは思わないまでも、こうした確実な底上げが毎年続いていけば、中国の超級リーグとTリーグの差も縮まり、さらに中国卓球と日本卓球自体の「均衡化」がはかられる日がくるというのもそう遠い未来のことではないかもしれません。今シーズンのTリーグでは、そんなことを感じました。

最後に、来シーズン以降はヨーロッパをはじめとする多様な国々の選手のTリーグ参加が必要になってくると、筆者はみています。Tリーグの理念には「世界No.1の卓球リーグの実現」とありますが、そのためにはやはり伝統的に卓球強国が多いヨーロッパはもとより、卓球新興国のインドや、近年成長著しい中東やアフリカの国々など、世界各国からの新風の流入が必要になるでしょう。また、プレースタイルや球質の違う様々な国の選手と対戦できる機会を得ることは、日本の選手たちにとってもプラスです。


(文・干場卓哉)


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