【アナタの知らない卓球の世界】日本選手を陰で支えるプロコーチ・邱建新に迫る
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突然ですが、皆さんは卓球のプロコーチという言葉をご存知でしょうか。
プロの卓球コーチは、単に技術を教えるだけでなく、選手のメンタル面や試合中の戦術、そして練習メニューまで、その選手の可能性を引き出すための重要なポジションとして活躍しています。
そのプロコーチの世界の中で、ひときわ異彩を放つコーチが存在します。
「邱建新(きゅう けんしん)」氏です。
邱建新氏は、及川瑞基選手、芝田沙季選手など多くのトップ選手たちの指導にあたり、彼らの能力を覚醒させています。
ではなぜ彼が、これだけプロコーチとして成功を収めることができているのか? 今回は、その卓越した指導力で活躍する、邱建新氏の魅力と功績に迫っていこうと思います。
邱建新の卓球キャリアと背景
邱建新氏は中華人民共和国の江蘇省出身で、現役時代には中国国内で全中国チャンピオンに輝いた実力者です。
卓球王国である中国で実績を残した後、彼は1989年にドイツに渡り、ブンデスリーガでのプレーを開始しました。
選手引退後には、指導者としての才能を開花。ドイツのフリッケンハウゼンの監督として、チームをドイツチャンピオンに導き、「コーチ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるなど、彼の卓球指導力はヨーロッパでも高く評価されました。
邱氏が日本で指導者として一躍注目を浴びたのは、リオデジャネイロオリンピックでの水谷隼氏の成功でしょう。
水谷氏は、2014年から彼をプライベートコーチに迎え、指導によって大きく飛躍し、全日本選手権での復活優勝や、前述のリオ五輪での活躍を果たします。
卓球日本選手初のシングルスでの五輪メダル獲得は、「邱さんの指導なしには成し得なかった」と、のちに水谷氏自身も語っています。
邱建新の指導とは?
邱氏の強みは、その引き出しの多さにあるのではないでしょうか。
ドイツ、中国、日本と3ヶ国での経験をもとに、彼は選手が迷わないように、要点をまとめた指導を行っています。
例えば、多球練習においては、「4球1セットで13セット行うことが、心肺機能に最も効果的」という科学的なデータに基づいた練習法を取り入れ、そこに観察から得た感性をもとにした選手に合った技術的な細かいアプローチを絡めた指導を実践。双方がバランスよく組み合わさったメニューにより、効率的に選手をレベルアップさせることを実現しています。
その結晶のひとつが、石川佳純氏の飛躍と言えるでしょう。
石川氏のバックハンドの苦手意識をすぐに見抜いた邱氏は、バックハンド改善のための練習メニューを考案。
その甲斐もあって、東京五輪の熾烈な代表争いを勝ち抜き、石川氏は3大会連続でオリンピックの団体戦でメダルを獲得しました。
彼女もまた、彼の指導に対し、「数年間でレベルが格段に上がった」と語り、彼の指導力の高さを絶賛しています。
また戦術理解度にも非常に優れ、ベンチコーチとしての能力も高く、森薗政崇選手や加藤美優選手など多くの選手を戦術面でバックアップしています。
まとめ
彼の緻密で合理的な指導スタイルは多くの選手から信頼され、その結果、邱氏のもとにはトップ選手からアマチュア選手まで集まってきます。
彼がなぜ勝たせられるコーチなのか、これまでご紹介してきた経験やスキルはもちろんのこと、筆者は指導に対する実績に裏打ちされた圧倒的な自信があるからではないかと考えています。
そして、何よりプロコーチとして「選手を勝たせる」、これを彼自身が突き詰めているからではないでしょうか。
(文・富永陽介)