【ツギクルTリーガー】チームを世代交代に導くホープ 上澤杏音


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【ツギクルTリーガー】チームを世代交代に導くホープ 上澤杏音


10月30日現在、3勝5敗と黒星先行の苦境に陥っているのが、Tリーグ発足以来4連覇を果たした常勝軍団・日本生命レッドエルフ(以下日生RE)。

かつて「大魔王」と恐れられた伊藤美誠選手が去り、早田ひな選手はパリ五輪で負傷した影響で今シーズン未だ出場なし、と絶対的なエースを欠く状態であるうえ、外国人選手が一人もいないという「純国産」チームであるが故の苦境ですが、反面チームの世代交代を促進するには格好の試練であるのも事実です。これからの日本卓球界を支える俊英たちがずらりとそろっているのですから、今後の巻き返しを大いに期待しましょう。


さて今回は、そんな日生REの中でもとりわけ飛躍が期待される上澤杏音(うえさわ・あんね)選手を紹介いたします。上澤選手は2007年2月に栃木県で生まれました。大好きな双子の姉・依央さん(東洋大学卓球部在籍中)、茉央さん(筑波大学卓球部在籍中)の背中を追いかけラケットを握った上澤選手は、小学校時代から全国大会の常連として将来を嘱望される存在でした。姉二人は高知の強豪、明徳義塾中学に進学しましたが、上澤選手は姉と同じコースを歩まず、ジュニアアシストアシスト卓球アカデミーでの修練を選択。中学は同アカデミーを学区に持つ大阪の貝塚第二中学に進学します。

アカデミーも貝塚第二中学も少数精鋭主義で、実力ある選手たちをじっくり鍛えることを主眼としており、上澤選手は精鋭中の精鋭として英才教育を受けます。その成果は如実にあらわれました。貝塚第二中学を全国中学校選抜卓球大会で中学2年時、3年時と2連覇に導くとともに、主将を務めた中学3年時の全国中学校卓球大会では同校を初優勝に導いたのです。


実績を買われ、中学3年時の2021-22シーズンから日生REに参入しTリーガーとしての歩みを始めます。しかし、当時の日生REは4連覇の真っ只中で、レギュラー陣が充実しており、出場すらままならない状態に。結果、ダブルスのみ2試合の出場で2敗と、Tリーグの壁に見事に跳ね返されてしまいました。

翌22-23シーズンは出場機会なし、続く23-24シーズンはシングルスでTリーグ初勝利を挙げたものの、試合出場はこの1試合のみと、アマチュア時代の成績を鑑みれば物足りないシーズンが続きました。

この雌伏の時を経て、香ヶ丘リベルテ高校の主将として臨んだ今夏は、大阪予選で10連覇中の王者・四天王寺高校を破り、同校をインターハイ優勝に導きました。9月に入ると、WTTコンテンダー・アルマトイ女子シングルス1回戦で、世界ランキングで70位以上格上の選手と対戦して見事に勝利し、大会の公式SNSで「番狂わせ」と報じられ、一躍世界の注目を浴びました。続くWTTユースコンテンダー・バンコクではU17の女子シングルスで見事に優勝。いよいよ覚醒か、との期待を持たせて24-25シーズンに突入しました。


シーズン入り後はレギュラー定着を果たし、現時点でシングルス1勝2敗、ダブルス2勝ち1敗とまずまずの成績を挙げています。9月28日の日本ペイントマレッツ戦ではシングルスで1勝した後、ビクトリーマッチにも抜擢されました。残念ながらビクトリーマッチでは敗れてしまったものの、現在の日生REの屋台骨を支える存在だと認められるだけの実力がついてきたことをうかがわせる一戦でした。日生REの今後の巻き返しは上澤選手の躍進にかかっていると言っても過言ではありません。上澤選手が、自身の勝利とともに、中学、高校で培ったキャプテンシーを発揮することができれば、日生RE2年ぶりの優勝にもまだまだ手が届きます。今シーズンの上澤選手からは目が離せません。



上澤杏音(うえさわ・あんね)
2007年2月26日栃木県生まれ。大阪の貝塚第二中を経て、現在香ヶ丘リベルテ高校在学中。双子の姉・依央さん、茉央さんも卓球選手。2024年インターハイ大阪予選で10連覇中の四天王寺高校を退け全国優勝。2021-22シーズンより日生REに所属。戦型は左シェーク異質攻撃型で、フォアの強打と、ラバーを貼り鋭い回転をかけたバックからのショットを使い分けるコンビネーションが特徴。


(文・江良与一)

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