【ツギクルTリーガー】ミライモンスターから真のモンスターへ 大野颯真
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序盤戦の好調さが嘘のように調子を落としてしまい、現在5位にまで急降下してしまったのが木下マイスター東京(以下KM東京)。今回は、そんなKM東京でTリーグデビューを果たした現役中学生、大野颯真(おおの・そうま)選手を紹介いたします。
大野選手は2011年10月に双子の一人として誕生しました。父正博さんは、実業団チームの鹿児島相互信用金庫で長い間選手として活躍、母百合子さんはインターハイや国体への出場経験があるという卓球カップル。「我が子を世界一の卓球選手にする」という目標を掲げた二人の間に生まれた、長女・紗蘭さん、長男・斗真さん、そして次男の颯真選手の三姉弟は、当然のごとく幼い時期から卓球選手としての歩みを始めます。
斗真、颯真兄弟がラケットを握り始めたのは、2歳11ヶ月の頃のことだったとのことですから、両親の熱量の高さがわかるというものです。いつでも練習ができるようにと、自宅に卓球室を設け、平日は4時間、休日は7時間の練習を続けたそうです。その甲斐あって、紗蘭さんは中学から住んでいる福岡県の希望が丘高校を、団体戦でインターハイ出場に導き、シングルス、ダブルスでもインターハイ出場を果たし、将来を嘱望されています。
兄の斗真さんも、山口の名門・野田学園中学に進学し、2024年の全日本卓球選手権大会カデットの部13歳以下男子シングルスで優勝を果たしており、世代のトップランナーの一人です。
そして、颯真選手は2019年の全日本卓球選手権大会バンビの部男子シングルスで優勝、2021年の同大会カブの部男子シングルス準優勝などの輝かしい成績を残し、中学は横浜の強豪、星槎中学に進学。同時に、木下グループのジュニア選手育成機関である、木下卓球アカデミーにも入部し、充実した環境での修練に励むこととなりました。
木下グループの育成機関は、張本智和選手(琉球アスティーダ)、松島輝空選手という「天才卓球少年」を育成、輩出しています。颯真選手は二人の先輩の系譜を継ぐ、正統派の「天才卓球少年」として大きな期待がかけられている大器なのです。彼にかけられた大きな期待は、マスコミに注目されることにもなり、フジテレビの『ミライモンスター』で密着取材を受けたこともあります。
しかし、期待の高さとは裏腹に、現在の颯真選手は壁にぶち当たっているようです。Tリーグでは選手登録後、ほどなくしてシングルスに出場したものの、強敵ハオシュアイ選手相手に、第1ゲームこそ10-11とあと一歩のところまで追い詰めましたが、最終スコアは0-3と力負け。
また、本年11月に行われた全日本卓球選手権大会カデットの部13歳以下男子シングルス準々決勝では、双子の兄であり最大のライバルでもある斗真さんと対戦し、ゲームカウント2-0から3ゲームを失い逆転負けを喫しました。お互いに手の内を知り尽くしている相手とはいえ、修練の質、量ともに充実しているはずの環境にいながら負けたことで、さぞかし悔しい思いをしているはずです。
颯真選手の戦型は、オーソドックスな右シェークドライブ型で、成長途上にあるため、パワーという点ではどうしても見劣りしますが、それを補って余りあるスピーディーなフットワークと、ショットのコース取りの正確さで、歳上の選手を凌駕する場面が多々見られます。現在の課題がレシーブであることも十分に自覚しており、日々の修練の中で改善を図る研究熱心さも持ち合わせています。
本年1月に「飛び級」で出場した全日本卓球選手権ジュニアの部では、並いる高校生たちを次々撃破してベスト16に進出。また、一般の部では1回戦シードという高評価を受けました。大学生と対戦した2回戦で残念ながら敗退しましたが、まさに次世代のホープと言って良い活躍ぶり。体躯の成長に合わせ、さらなる研鑽を積んでいけば、「ミライモンスター」が本物のモンスターになる日もそう遠いことではないでしょう。
大野颯真(おおの・そうま)
2011年10月25日鹿児島県生まれ。現在、神奈川の星槎中学に在学のかたわら、木下卓球アカデミーに所属しそこでも修練を積んでいる。父母ともに卓球選手で、姉・紗蘭、双子の兄・斗真も将来を嘱望される卓球選手。2024年よりKM東京に所属。戦型は右シェークドライブ型でスピーディーなフットワークと正確なコース取りのショットが武器。
(文・江良与一)