【ツギクルTリーガーの通信簿】着実に地力はついているものの「ポスト伊藤美誠」には届かず 櫻井花
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ノジマTリーグ2024-25シーズン男子は、T.T彩たまが破竹の7連勝を飾り、ついに首位に躍り出ました。この勢いがどこまで続くのか、どのチームがストップをかけるのかに注目が集まります。また女子は、日本ペイントマレッツ(以下ニッペM)と木下アビエル神奈川(以下KA神奈川)の上位2強の直接対決が行われ、ニッペMがKA神奈川をねじ伏せて首位を死守しました。こちらも最後まで目の離せないシーズンとなりそうです。
さて、今回の通信簿は常に首位を争うチームの中で、なかなか存在感を示すことのできていないKA神奈川の櫻井花選手にご登場いただきます。
北海道生まれの櫻井選手は、小学校時代から数々の全国大会で好成績を収めていましたが、ずば抜けた存在ではありませんでした。しかし、コーチ役である父との練習を見ていた木下アカデミーGMの渡邊隆司氏が、ラリーのボールの速さに目をつけ、木下アカデミーへ勧誘します。当時地元の中学に進学していた櫻井選手は、ここで大英断を下し、親元を離れ神奈川へ転居します。中学も木下アカデミーと提携している星槎中学に転校し、二ヶ所の練習拠点で修練に励むこととなりました。そして、2022-23シーズンにはKA神奈川と契約を交わし、現役中学生Tリーガとしても歩み始めました。
しかし、Tリーグの壁は予想以上に高いものでした。毎シーズン覇権争いを繰り広げているKA神奈川は、同学年の張本美和選手を筆頭に、日本代表クラスの選手がずらりと並んでおり、敵チームと対戦する前に、まず出場選手に選ばれるための競争に勝つことができていません。
昨シーズンまでの通算成績は、ダブルスのみ3試合出場で2勝1敗でした。今シーズンも、ダブルスのみ1試合の出場で敗戦と、入団後まだシングルスは出場すら果たしておらず、「一人立ち」した選手と見なされていないのが現状です。
しかし、充実した環境下での修練と、日本のトップ選手たちとの切磋琢磨の日々を送った2年余りの日々は、櫻井選手の実力を確実に向上させています。2023年の全国中学校卓球大会では星槎中学を団体優勝に導きました。また、同年のWTTユースコンテンダー・プエルトプリンセサではU-15女子シングルスで優勝し、初の栄冠を手にしました。若手選手の飛躍への妙薬は、何より「勝利」の経験です。この優勝で得た自信は、今後の櫻井選手のジャンプアップに大いに寄与するはずです。
本年4月には星槎国際高校へ進学し、新たなステージでのチャレンジも始まりました。5月の関東大会では、1年生ながらシングルス、KA神奈川のチームメイトでもある牧野美玲選手とペアを組んだダブルスともに優勝し、二冠を獲得。夏のインターハイでは、シングルスでベスト16、牧野選手とのダブルスではベスト8まで進み、同世代の選手の中ではトップクラスの実力を持つことを証明しました。
まだまだ心身ともに成長途上にある年齢であるゆえ、大きな伸び代も持ち合わせているはずで、何かキッカケさえあれば一気にブレイクする可能性を秘めています。そしてそのキッカケをつかむためには試合への出場機会を増やしていくしかありません。
櫻井選手の戦型は右シェーク異質攻撃型で、前陣速攻を得意としています。目標とする伊藤美誠選手と同じ戦型で、ラバーのタイプも伊藤選手と同じにしているそうです。それ故「仮想・伊藤美誠」として、自チームの有力選手の練習相手として重宝されていましたが、伊藤選手がTリーグから去った今、従来の「役割」にとらわれず、思い切って櫻井選手独自の戦型を確立するチャンスです。そして、独自のスタイルの確立こそが、憧れの伊藤選手に追いつき、追い越すための必要条件となります。
櫻井花(さくらい・はな)
2008年6月6日北海道生まれ。星槎中学を経て、星槎国際高校在学中。2023年全国中学校卓球大会団体優勝、WTTユースコンテンダー・プエルトプリンセサU-15女子シングルス優勝。2022-23シーズンよりKA神奈川所属。戦型は右シェーク異質攻撃型で、前陣での速攻が特色。
(文・江良与一)