【ツギクルTリーガー】「名将の娘」という肩書きが外れる日を目指す 今枝愛美


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ノジマTリーグ2024-25シーズンは、男女ともに上位4チームまでが優勝の可能性を残す混戦模様が続いています。上位陣の星の潰し合いが繰り広げられる後半戦、ますますの盛り上がりを期待しましょう。

さて、今回のツギクルTリーガーは、上位4チームにはやや水をあけられてしまった九州アスティーダ(以下九州A)に、今シーズンから加わった今枝愛美(いまえだ・まなみ)選手を紹介いたします。


今枝選手は2005年5月に愛知県で誕生しました。お父さんは、愛工大名電高校監督で同高を全国屈指の強豪校に育て上げた、今枝一郎氏です。その愛娘ともくれば、それこそ歩みの足取りもおぼつかないような幼少期からラケットを握ってきたのでは、と思ってしまうのですが、意外なことに卓球を始めたのは小学校入学後。しかも、いくつかの習い事候補の選択肢の一つから選んだとのことでした。そして、その後も一郎氏は、今枝選手からの質問があれば答える程度と、イメージする英才教育とはかけ離れた控えめなスタンスで接したそうです。一郎氏が、とあるインタビューで「親として、絶対的に指導が不足していました」と苦笑まじりに語るほど、家庭内での卓球の熱量は低かったようです。


小学校時代は、地元の名門卓球クラブ、卓伸チームに所属します。ここで小学校4年生頃から中国人コーチに指導を受けるようになると、恵まれた潜在能力が開花し、各種の大会で好成績を収めることとなります。

小学校卒業後も、卓球名門校への「留学」などはせずに地元の名古屋市立振甫中学に進学。ただし、愛知みずほ大学瑞穂高校(以下愛み大瑞穂)卓球部の練習に毎日参加し、修練は積んでいました。これは、同高の指導者・神谷卓磨氏が一郎氏の教え子であるという縁によるものでした。やや変則的なかたちではありますが、充実した練習を積んだ今枝選手はそのまま愛み大瑞穂に進学し、当然のことながら卓球部に入部します。

しかし、同高1年時には卓球生活最大の危機を迎えます。様々な要因が重なって伸び悩み、卓球をやめようと思う日々が続いたのです。この危機はチームメイトたちからの励まし、母のメンタル面でのサポート、父の技術的なサポート、そして何より今枝選手の「自分がチームを変えたい」という強い思いでなんとか乗り越えました。この「自分がチームを変えたい」という思いは、一つ一つのプレーに対し、良かった点や悪かった点を深く分析し、良い点はより良く、悪い点は改善につなげるための練習を行うという行動に結びつきました。

3年時に主将を任された際は、この視点を自分自身の技量の向上につなげるだけでなく、他の部員たちへのアドバイスに活かすことも心がけたそうです。従来、指導者からの一方的な押し付けでなく、選手自身が考えて練習することを尊重する、愛み大瑞穂卓球部の「部風」に見事にマッチした今枝主将体制でした。そして、彼女に率いられた同校は、2023年のインターハイ女子学校対抗で、優勝した四天王寺高校に準決勝で惜敗したものの3位入賞を果たします。また、同大会のダブルスでは遊佐美月選手とペアを組んだダブルスで、見事優勝を果たしました。


そして、今春からは強豪愛知工業大学に進学し、さらには九州AからTリーグに参加しました。Tリーグではシングルス4戦全敗、ダブルスは1勝したものの、出場はこの1試合だけと、まだ満足のいく成績は残せていません。しかし、高校時代に培った「考える卓球」を突き詰めて修練を積んでいけば、大きな飛躍が望めるはずです。Tリーグで活躍を続け、「今枝一郎氏の娘」という枕詞付きで語られるのではなく、「今枝愛美の父が今枝一郎氏」と呼ばれるようになる姿を期待して応援していきましょう。


今枝愛美(いまえだ・まなみ)
2005年5月18日愛知県生まれ。父は愛工大名電高校卓球部監督の名将今枝一郎氏。名古屋市立振甫中学、愛み大瑞穂を経て、今春愛知工業大入学。2023年インターハイ女子ダブルス優勝。2024-25シーズンより九州Aに加入。戦型は右シェークドライブ型で、162cmの恵まれた体躯から繰り出す強烈なドライブが武器。


(文・江良与一)

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