【ツギクルTリーガーの通信簿】海外武者修行で一回り大きな選手に 岡野俊介
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今節のノジマTリーグ2024-25シーズンは中盤戦たけなわ。男子は琉球アスティーダ(以下琉球A)が2連勝を飾り2位に浮上、女子は京都カグヤライズが今シーズン初勝利を飾りました。今週末の小休止を挟み、来週からはいよいよシビアに順位が上下動する戦いが始まります。どのチームがプレーオフ進出の権利を手にするか、最後までわからないような白熱した展開を期待しましょう。
さて、今回の通信簿には大いなる飛躍が期待される、Tリーグ参戦2年目の岡野俊介選手にご登場いただきます。
2004年2月に静岡県で誕生し、小学生時代から各種の大会で好成績を収めていた岡野選手は、より良い環境を求めて、愛工大名電中学に進学、そのまま高校も愛工大名電高校に進みました。しかし、当時の愛工大名電中・高では篠塚大登(琉球A)、谷垣佑真(岡山リベッツ)、濱田一輝(静岡ジェード)の3選手がガッチリとレギュラーを張っており、残念ながら岡野選手はこの3選手の牙城を崩すことができませんでした。
大学は心機一転、系列の愛知工業大には進まず、岐阜の朝日大学を選択。ここで多くの試合出場の機会を得た岡野選手は、2023年の全日本大学総合卓球選手権男子シングルスで優勝し、ブレイクしました。
勢いそのままに琉球Aに入団しTリーガーとして歩み始めた岡野選手でしたが、Tリーグの壁は厚く、2023-24シーズンはシングルス1試合のみの出場で敗戦と、「試運転」しかさせてもらえない状態で終了してしまいました。
もう一段の成長を目指し、大学の春休み期間を利用して、オーストリア・ブンデスリーガでの武者修行に挑みました。言葉の壁や長時間の自動車での移動、アウェーでの手荒い洗礼など、数々の困難に襲われながら、シングルス12試合に出場し7勝5敗の好成績を挙げ、所属していた「ウィーナー・ノイシュタッド」のシーズン優勝に貢献しました。また、シーズンの合間にはWTTフィーダー・バラジュディン大会にも出場し、横谷晟選手(木下マイスター東京)とペアを組んでのダブルスで3位入賞を果たしました。あるインタビューで、「日本にいる時と比べると海外は我慢することが続くので、その経験をしてきたから、日本では『大丈夫だろう』『もっと我慢できるだろう』と思えています」と語ったように、このオーストリアでの経験は岡野選手のメンタル面の成長に大きく寄与したようです。
日本に帰ってきてからは、持ち前の熱心さで卓球技術の修練に励むとともに、トレーナーに指導を受けて本格的に筋トレを実施し、特に体幹の強化に努めています。また、海外の卓球選手の動画を見て、卓球の知識や技術を吸収することにも熱心に取り組んでいます。ただし、残念ながらこうした努力の成果は、まだ目に見えるかたちではあらわれてきてはいません。今年の全日本大学総合卓球選手権男子シングルスでは、徳田幹太選手(金沢ポート)に決勝で敗れて、連覇を逃してしまいました。Tリーグでの成績も、出場機会こそ増えたものの、シングルス0勝1敗、ダブルス3勝3敗と物足りない成績が続いています。チームの成績がなかなか上向かない中で我慢の時を過ごしていたのでしょう。チームに勢いが生まれてきた今節以降は、その勢いに乗り、岡野選手自身も上昇気流に乗っていきたいところです。
朝日大学卓球部監督の米塚雅弘氏によれば、岡野選手の長所はチキータをはじめとするバックハンドのショットのレベルの高さと、サーブの技術の高さにあるそうです。反面、レシーブなどの守備力には難ありとも見ており、この弱点の克服が今後の成長の鍵となります。海外武者修行で「我慢」を身につけた岡野選手が、どのようにこの課題を克服していくか、要注目です。
岡野俊介(おかの・しゅんすけ)
2004年2月9日静岡県生まれ。愛工大名電中学、高校を経て現在朝日大学在学中。2023-24シーズンより琉球Aに入団。2023年全日本学生卓球選手権大会男子シングルス優勝、2024年の同大会では準優勝。戦型は左シェークドライブ型で、バックハンドからの強烈なドライブと強力なサーブが武器。
(文・江良与一)