【アナタの知らない卓球の世界】本当にサーブ側が有利? 卓球の通説を数字で検証
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卓球の試合では、「サーブ側が有利」というのはよく語られる卓球の通説と言ってもいいでしょう。
これはサーブを打つ側は、自分のペースで回転やコースを選んで、ラリーの主導権を握りやすいため。
しかし、本当にサーブ側が常に有利なのか? 今回は最新のTリーグデータを基に、得点率などの観点から、その通説について検証していきたいと思います。
なぜこの通説が生まれたのか?
サーブが有利であると考えられている理由は、先述の通り。大部分は、やはり主導権という点にあります。
サーブはラリーの主導権を握る重要な武器であり、得点につなげやすい展開を作り出します。
特に、強力なサーブは相手に対して圧力をかけ、ミスを誘発する可能性が高くなります。
そうしたことから、一般的に「サーブ側」が優位と言われるようになっています。
昨年のサーブ時ポイントの得点率
では、実際にサーブ側が優勢なのか、Tリーグ2023-2024シーズンのデータを基にして確認していきましょう。
2023-2024シーズンのTリーグHPのデータによると、男子シングルスでは琉球アスティーダの張本智和選手がサーブ時のポイント獲得率60.4%でトップに立っています。
一方、女子シングルスでは日本ペイントマレッツの橋本帆乃香選手が59.5%という高い数値を記録しています。
※チームマッチ×0.6以上出場した選手のみから算出
これら上位陣は確かにしっかりとサーブ側=有利を示す数字を残しています。
ただ、確実に優位性を保っていると言える5割5分以上の値をマークしている選手は、男子も女子も5名弱しかおらず、しかも6割以上の獲得率を誇っている選手は男女併せて、張本智和選手しかいません。
またこの傾向は昨年だけでなく、ここ3年ほど同じようなデータが出ています。
この数字からもわかる通り、サーブ側が確実に強いということは、データとしてはなくなってきているのです。
このデータの背景
ではなぜ今、「サーブ側が有利」という通説が崩れてきたのか?
この点については、背景としてレシーブ技術の進化と、エンタメ性を高めるためのラリー重視論調が関わってきていると考えられます。
確かに2000年代まではもしかしたら、サーブ側が強かったのかもしれません。
しかし1980年代から2000年初頭の大きなルール改正によって、サーブ側の優位性が徐々に削られていってしまったのです。
またチキータの出現により、台上での強打ができることで、昔に比べてリターンエースを狙いやすくなったという点も挙げられます。
こうした背景によって、サーブ側もレシーブ側も同じようにポイントを稼げるようになってきているのです。
サーブとレシーブの練習優先度
では、サーブとレシーブ、どちらを優先的に練習すべきでしょうか?
今回データを見て迷う方もいると思います。
ただそうした方に対して、もし筆者がアドバイスをするとしたら、このデータを見てもサーブの練習をメインにしたほうが得策と考えます。
その大きな理由として、高いレシーブ技術を持つ選手というのは、トップ選手に限られてくるからです。
レシーブの基本は「返球」すること、そしてラリーを続けること。
そのため基本はプロであろうと、レシーブから強打をする意識よりも、返球することを意識づけします。
主導権を持って攻めていけるのであれば、それが勢いにもつながってきます。
もちろんレシーブ側を疎かにしてはいけませんが、もし悩むのであればサーブの練習を多くしたほうが勝利に近づきやすいといえるかもしれません。
(文・富永陽介)