【ツギクルTリーガーの通信簿】全てをリセットして新しい卓球人生を歩む 及川瑞基
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ノジマTリーグ2024-25シーズンは1週間の小休止を経て熱戦が再開されました。4節を消化した時点で、男子は昨年王者の木下マイスター東京(以下KM東京)が5戦負けなしと文字通り無敵の強さを見せており、早くも独走の気配が漂っています。他の5チームにはそんな気配を吹き飛ばすほどの奮闘を期待したいところです。
さて、今回の通信簿は、今シーズン王者KM東京から岡山リベッツへ移籍して「復活」を期す及川瑞基(おいかわ・みずき)選手を紹介いたします。
及川選手の2023-24シーズンのTリーグでの戦績はシングルス3勝5敗、松島輝空選手と組んだダブルスでは2勝1敗と物足りないものでした。またパリオリンピックの選考ポイントレースでも10位に終わり、不完全燃焼という言葉が見事に当てはまってしまう一年となりました。2020-21シーズンのTリーグではシングルスで19勝5敗という驚異的な戦績で年間MVPに輝き、また2021年の卓球全日本選手権大会男子シングルスで優勝した実績を持つ及川選手にとってはさぞかし歯がゆいシーズンだったに違いありません。復活を期そうにも、現在のKM東京には新旧の実力者がずらりと揃っていて、出場機会を得ることすら容易ではありません。
そんな現状を打破するために選んだのが、新天地岡山Rへの移籍でした。そして同時に、使用するラケットも長年親しんできたバタフライ製のものから、スウェーデンのスティガ製のものに替える決断も下しました。卓球選手にとって、ラケットを替えるということは別の競技に転向するのと同等のインパクトを持つ変更です。そろそろベテランと言われる年齢に差し掛かろうというこの時期に、卓球人生の全てを一新するような変化を求めたところに及川選手の決意の大きさ、強さが感じられます。
そんな中で2024-25シーズンが開幕。及川選手は岡山Rの主力選手として、9月23日現在チームが消化した3試合の全てに出場し、シングルスで1勝2敗、ダブルスで2勝無敗の成績を残しています。シングルスでは負けが先行する、やや残念な立ち上がりとなりましたが、KM東京時代のダブルスパートナー、松島輝空選手の終生のライバルである吉山和希選手と組んだダブルスは好調な滑り出しです。特に琉球アスティーダとの対戦では張本智和、岡野俊介ペアという、Tリーグでも屈指の強力な相手に堂々の勝利を収めました。及川選手自らの活躍もさることながら、若手のホープ吉山和希選手の成長にも大きく寄与する勝利でした。
及川選手の戦型はオーソドックスな右シェークドライブ型ですが、両ハンドから強力なショットを連続して放ち続ける前陣での速攻が大きな武器です。また、中学から大学時代にわたって所属したブンデスリーガで身につけた「思考する卓球」も及川選手を語る上で欠かせません。実際に対戦する場で、相手の得手不得手を見抜き、相手の持ち味を殺した上で、弱点を突いていく、という戦法を高いレベルで実行できる選手はなかなかいません。先述の吉山和希選手をはじめとした、岡山Rの若手選手たちに大きな影響を与えていくことでしょうし、ここでの及川選手の「教え」が、数年後の岡山Rの飛躍につながっていく可能性も大です。
及川瑞基(おいかわ・みずき)
1997年6月26日宮城県生まれ。青森山田中学、高校を経て専修大学卒業。2020-21シーズンにKM東京に入団しTリーグ参入。2024-25シーズンから岡山Rに移籍。戦型は右シェークドライブ型で、両ハンドから強烈なドライブを連続して繰り出すプレーが特長。ブンデスリーガ仕込みの「思考する卓球」で対戦相手に的確に対処し、弱点を突くことにも長けている。
(文・江良与一)