【ツギクルTリーガー】「張本キラー」はシン・日本のエースになれるか? 戸上隼輔
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今回は、戸上隼輔選手を紹介いたします。すでに十分に名が轟いている戸上選手を「ツギクルTリーガー」とすることに違和感がおありかもしれませんが、理由はおいおい説明していきます。
戸上選手は2001年8月に三重県で誕生しました。家族全員が卓球経験者という卓球一家に生まれた戸上選手は、3歳から卓球を始め、全国大会にも出場し数々の好成績を修めます。小学校卒業後、一度は地元の中学に進学したものの、全国レベルの指導体制をもとめて、山口県の野田学園中学に転校します。ここでも全国大会の上位まで進出しますが、日本一の栄冠に輝くことはありませんでした。
そのまま野田学園高校に進学した戸上選手は、2018年のインターハイのシングルスで優勝し、ついに日本一の座に就きます。そして勢いそのまま、高校在学のままTリーガーとしてT.T彩たまに入団。ところが、高校日本一になったとはいえTリーグの壁は厚く、2018-19シーズンはシングルスのみで1勝1敗、2019-20シーズンもシングルス1勝1敗、ダブルス1勝1敗とパッとしませんでした。
2020-21シーズンからは琉球アスティーダに移籍。環境が変ったことで起用機会も増え、シングルス9勝4敗とチームのエースと言える存在に成長しました。またこのシーズンは張本智和選手とシングルスで2回対戦して2回とも勝利しています。この頃から「張本キラー」の異名で呼ばれるようになりました。2021-22シーズンも琉球でシングルス6勝2敗とエースにふさわしい働きを見せた上、前シーズンでは0勝3敗であったダブルスでも2勝0敗と成長をみせました。
そして2022年1月の全日本卓球選手権大会シングルス・ダブルスともに優勝し、卓球ファンをアッと言わせました。ただし「日本のエース」の名称は依然として張本智和選手に冠せられたままでした。理由は国際試合での成績が張本選手に比して今一つ振るわないこと。戸上選手は「内弁慶」状態を打破するために、2022年4月にドイツのブンデスリーガの名門チーム、オクセンハウゼンに入団します。ここで、限られた出場機会の中ながら欧州の強豪たちと対戦し確かな爪痕を残します。パワーに勝る外国人選手と対戦する中で、自身の武器である連続ドライブに磨きをかけられたこと、そして自分自身以外に頼る存在がいないという環境の中で精神的にも強くなれたようです。
ドイツでの武者修行の成果が注目された2023年の全日本卓球選手権大会シングルスでは、決勝で因縁の張本選手と対戦し、見事に勝利して2連覇を達成しました。
こうした堂々たる実績をひっさげて2023-24シーズンからは木下マイスター東京に入団しTリーグ復帰を果たしました。来年のパリオリンピックに向け、戸上選手が張本選手「だけ」に強いというイメージを払拭し、外国人選手にも勝てる「シン・日本のエース」に成長する姿を期待して応援していきましょう。
戸上隼輔(とがみ・しゅんすけ)
2001年8月24日三重県生まれ。山口県の野田学園中学・高校を経て現在明治大学座在学中。高校在学中の2018年にT.T彩たまに入団し、Tリーガーとしての活動を開始。琉球アスティーダ、ドイツブンデスリーガのオクセンハウゼンを経て、2023-24シーズンから木下マイスター東京に入団。
(文・江良与一)