【ツギクルTリーガー】常に自分自身を見つめながら歩みを進める 小野泰和


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Tリーグ発足以来の老舗チームながら、優勝には縁遠いシーズンを重ねてきているのがT.T彩たま。今回はそんな苦境続きのT.T彩たまに加わった、インターハイ男子シングルス王者・小野泰和(おの・だいと)選手を紹介いたします。


小野選手は2006年6月に京都府で誕生しました。ともに卓球経験者である両親のもとに生まれた小野選手は、幼稚園時代からラケットを握り、球を追いかける日々をスタートさせました。地元京都の卓球クラブ、グリーンネットに所属した小野選手は、ぐんぐんと腕を上げ、小学校4年時には、全日本卓球選手権大会カブの部男子シングルスで3位に入り、一躍脚光を浴びることとなります。この頃から、グリーンネットでは同年代の選手とだけではなく大人に混じって練習するようになり、周囲からも次世代のエースと見なされるようになりました。

しかし、ここで小野選手は第一の挫折を味わいます。遊びたい盛りの時期でもあったため、卓球に身が入らず、練習で手を抜くような日々が続いてしまったのです。当然のことながら成績は上がらず、小学校6年時には全国大会への出場すら叶わないほどに急降下してしまいました。


このままではいけないと考えていたところに、その素質の高さを見抜いていた出雲北陵中学からの誘いがかかり、小野選手はより良い環境を求めて、親元を離れる決断を下します。ところが、環境を変えてはみたものの、小野選手の調子は上がらないままでした。卓球を、来た球を何の考えもなしに打ち返すだけの「球の打ち合い」だと考えていたためでした。そのためか、かなりムラっ気を見せていたようで、調子のいい時は手がつけられないほど強いものの、気分が乗らないと呆気なく負けるような試合が続いていたそうです。第二の挫折でした。

ここで挫折したままなら、小野選手は卓球界からフェードアウトしてしまっていたでしょうが、小野選手は一念発起して卓球に真剣に向き合うことを決意しました。漫然と球を打ち返すだけのプレースタイルを改め、一球一球コース取りやスピンのかけ方などに工夫を凝らすようになりました。自分の最大の持ち味であるフォアからの強打を活かすプレースタイルを模索する中で、中学3年時の全国中学校卓球大会男子シングルでベスト8入りし、復活への確かな歩みを始めました。

エスカレーターで出雲北陵高校に進学後も「考えながらの卓球」に打ち込みました。そして主将の重責を担って迎えた本年3月の全国高校選抜卓球大会ではチームを団体優勝に導き、島根県に初の栄冠をもたらしました。小野選手個人はシングルス、ダブルスで通算11戦して無敗とまさに無双状態。その勢いに乗って臨んだ今夏のインターハイでも、男子シングルスで優勝を果たしました。


そして、その実力を高く評価したT.T彩たまからの誘いに応じ、今シーズンからTリーグに参戦することとなりました。デビュー戦は同世代のライバルで今までに数々の大会で激突してきた松島輝空選手(木下マイスター東京)との対戦でしたが、残念ながら勝利することはできませんでした。

まだ、小野選手のTリーガーとしての人生は始まったばかりです。一度見失いかけた、フォアからの強打を最大限に活かすという自分の理想像を改めて構築し直し、その理想像を突き詰めていくことを目標に掲げている小野選手の修練がブレることはないでしょう。そしてブレのない修練を積み重ねていくことが、確実な進歩につながっていくことを身をもって体験してきているのが小野選手です。

小野選手がT.T彩たまに栄冠をもたらす日を期待して応援していきましょう。



小野泰和(おの・だいと)
2006年6月29日京都府生まれ。出雲北陵中学を経て、現在出雲北陵高校在学中。2024年インターハイ男子シングルス優勝。2024-25シーズンよりT.T彩たまに所属。戦型は左シェークドライブ型でフォアからの強打が最大の武器。またフォアからの強打を続けるための戦略的なコース取りにも長けている。



(文・江良与一)

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