【ツギクルTリーガーの通信簿】結果を出して名実ともにチームの中心選手に 濵田一輝
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ノジマTリーグ2024-25シーズン男子は、上位チームと下位チームの差が徐々にはっきりとしてきました。初優勝を狙う岡山リベッツと連覇を狙う木下マイスター東京(以下KM東京)の2強が順調に勝ち星を伸ばす一方で、3位以下の4チームは混戦状態です。このまま2強のマッチレースを許さないよう、下位チームの巻き返しに期待したいところです。
さて、今回の通信簿は11月2日の対戦で昨季の王者KM東京にビクトリーマッチまでもつれ込む接戦を演じながら、惜しくも敗れた静岡ジェード(以下静岡J)から、その中心選手としての飛躍が期待される濵田一輝選手にご登場いただきます。
濱田選手は、祖父母、両親がいずれも全国に名を轟かした卓球の名選手で、二人の弟もそれぞれの年代で好成績を収める卓球選手という、代々続く名門卓球一家の長男です。幼少期から数々の大会で上位入賞を果たした濱田選手は、一度地元の高知大附属中に進学しますが、より良い環境を求めて全国の俊英が集う愛工大名電中学に転校。エスカレーターで進学した愛工大名電高で本格的に実力が開花し、3年時の2021年には全日本卓球選手権大会ジュニアの部男子シングルスで優勝を果たします。
そして、その勢いを駆って琉球アスティーダ(以下琉球A)に入団し、現役高校生のままTリーガーとしての歩みを始めます。2021-22シーズンから、琉球Aはチームとしての強化が進み、優勝争いの常連となるチームにのし上がりましたが、濱田選手は残念ながらチームの成長と軌を一にすることはできず、在籍3シーズンの通算成績はシングルス8勝12敗、ダブルス2勝5敗と苦戦続きでした。
高校卒業後進学した早稲田大学では、1年生からエースとして各種の大会で好成績を挙げていたものの、世界でも屈指のレベルの高さを誇るTリーグにおいてはアマチュアの大会での成績など全く当てにならないことを思い知らされたのです。
Tリーグでの低迷を打破すべく、濱田選手は、2024-25シーズンを前に大きな決断をくだしました。琉球Aを退団し、静岡Jに移籍したのです。選手層が厚く、常時出場さえままならない琉球Aよりも出場機会が増えるものの、そのぶん格上の選手との対戦も数多く予想される苦境に自らを追い込んだところに、濱田選手の並々ならぬ決意の程がうかがえます。
静岡Jでは当然のことながら主力としての扱いを受け、11月3日現在シングルス7試合、ダブルス1試合に出場しています。しかしながら、ダブルスでは勝利したものの、シングルスは1勝6敗と大きく負け越しています。シングルス6敗のうちの一つは、先述のKM東京との対戦の際のビクトリーマッチ。残念ながら結果は悔しいものとなりましたが、強豪チームとの一戦でチームの命運を託されたところに、期待の大きさを感じさせました。スコアも9-11の、まさに惜敗でした。こうした緊張感の高い試合を数多く体験し、そして勝利していくことこそが、濱田選手がジャンプアップするための最良の糧となるはずです。
濱田選手の戦型はオーソドックスな右シェークドライブ型で、バック側への返球でも回り込んでフォアで打ち返すほどの俊敏さが最大の魅力です。ただし、それだけでは勝利数は伸ばせないことは今までの成績で実感したはずですから、何か新しい武器の開発が待たれるところです。おそらくは本人が一番新しい必殺技の必要性を痛感し、日々の修練の中で開発中であろうと思われますので、その披露を待つことにしましょう。
濵田一輝(はまだ・かずき)
2003年9月12日高知県生まれ。母方の祖父母、両親ともに名選手で、二人の弟も実力者という卓球の名門一家の長男。愛工大名電中・高校を経て、現在早稲田大学在学中。早大卓球部では張本智和選手(琉球A)とチームメイト。2021-22シーズンに琉球Aに入団しTリーグデビュー。今シーズンより静岡J所属。戦型は右シェークドライブ型で俊敏なフットワークからの安定したドライブ連打が最大の武器。
(文・江良与一)