【アナタの知らない卓球の世界】全国を歓喜の渦に 日本卓球史に残る逆転劇を振り返る
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下剋上のドラマが繰り広げられた2024年のプロ野球。
3位から見事な逆転劇を見せたのは、横浜DeNAベイスターズでした。
リーグ終盤に強豪を次々と倒して駆け上がる姿は、多くのファンの心を熱くしました。
スポーツではしばしば、こうした大逆転劇が起こります。
選手たちが見せたドラマは、私たちの記憶に鮮やかに刻まれていくものとなります。
そうした記憶に残る逆転劇は、卓球界にも存在します。
そこで今回は、日本卓球史に残る2つの名勝負を振り返っていきたいと思います。
水谷隼選手のリオ五輪での大逆転劇
1つ目は、リオ五輪での水谷選手の試合を紹介します。
2016年、リオデジャネイロオリンピック卓球男子団体決勝で、日本代表は中国と対戦しました。
日本卓球界のエース、水谷選手が挑んだのは、世界トップクラスの実力を誇る格上の許昕選手。
試合は水谷選手が第1ゲーム、第2ゲームを連取し、絶好のスタートを切ったものの、第3ゲーム、第4ゲームを許昕選手に奪われ、ゲームカウント2-2に持ち込まれました。
しかも、最終ゲームでは7-10とリードを許す展開にまで突入。セオリー通りなら、そのまま敗北となる可能性が高い状況でした。
しかし、水谷選手はここで諦めませんでした。
「目の前の1本を取ることしか考えていなかった」と語るように、強靭なメンタルで攻め続け、11-10で逆転勝利を収めたのです。
この試合は、日本男子卓球史上初の中国トップ選手からの五輪勝利という歴史的な瞬間となり、日本中に感動をもたらしました。
水谷選手は「この勝利はメダル以上の価値がある」と語り、卓球人生の大きな転機となったことを後に振り返っています。
平野早矢香選手の世界卓球での奇跡の勝利
もう一つの劇的な試合となったのが、2014年の東京で開催された世界卓球選手権女子団体準決勝。
日本は31年ぶりの決勝進出を目指し、中国香港と対戦していました。
勝負が1対1で迎えた第3試合、平野早矢香選手は過去3連敗を喫していた呉穎嵐選手と対戦します。
序盤から呉選手のチキータからの両ハンドドライブに苦しみ、平野選手はゲームカウント0-2、第3ゲームも4-9と追い込まれる絶体絶命の状況に。
誰もが敗色濃厚と思ったその時、平野選手は「相手が勝ちを意識して硬くなった」と気づき、そこから気迫のこもったプレーを見せ始めます。観客の熱い応援を背に受け、9-10から粘りに粘って10-10に追いつき、最終的に12-10で第3ゲームを奪取。
その勢いで第4ゲーム、第5ゲームも制し、番狂わせを演じてみせたのです。
この勝利は平野選手にとっても忘れられない試合となり、彼女は後に「もう一回やれと言われても絶対にできない試合」と語っています。
観客も一体となって応援し、日本チームの31年ぶりの決勝進出が決まった瞬間、会場は大歓声と涙に包まれました。
まとめ
ほんの一部ではありますが、筆者が選ぶ卓球史に残る2試合を今回ご紹介させていただきました。
卓球はスピードと技術が求められる競技ですが、選手のメンタルの強さや精神力も大きな要素です。
水谷選手と平野選手が見せた逆転劇は、ただの勝利ではなく、まさにそうしたものが表れた象徴的な試合だったと思います。
卓球のひとつの魅力は、ときに予想を覆すようなドラマが生まれるところにあり、昨今では、早田ひな選手や大藤沙月選手らが、土壇場で挽回する戦いを見せてくれています。
これからも日本卓球史に刻まれる、新たな感動の記憶が生まれることに期待し、彼らの活躍に注目していきましょう。
(文・富永陽介)