【ツギクルTリーガー】「世界」を知る男、満を持して日本代表へ 田中佑汰
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11月4日に行われた対戦で、悲願の初優勝に向け首位を走る岡山リベッツ(以下岡山R)にマッチスコア4-0と圧勝し、独走に”待った”をかけたのが金沢ポート(以下金沢P)。この試合で、難敵ハオシュアイ選手をフルゲームの末下して勝利に貢献したのが、今回紹介する田中佑汰(たなか・ゆうた)選手です。
田中選手は2000年11月生まれで、幼い頃は親が転勤族だったこともあり全国各地を転々としていました。千葉県在住時代に、姉の千秋さんとともに千城卓球クラブに入部して卓球を開始しました。その後に移り住んだ熊本で、名門・城山ひのくにジュニアに入部。ここで卓球界のレジェンドであり、自身の現役引退後は主に若年層の指導にあたってきた松下雄二氏に素質を見出されて指導を受けたことで急成長し、同世代の中でのトップ選手と目されるようになりました。
小学校卒業後は、より良い環境を求めて、全国から精鋭が集まる愛工大名電中学に進学。この選択で、田中選手は順調に成長し、2014年の全日本卓球選手権大会カデットの部14歳以下男子シングルス優勝、2015年の全国中学校卓球大会男子シングルス準優勝などの輝かしい成績を残しました。
エスカレーターで進学した愛工大名電高校では、インターハイ学校対抗3連覇の中心選手として大活躍します。3年時には主将を務め、その統率力は当時から現在に至るまで同高の監督を務める今枝一郎氏に、「田中キャプテンなくして学校対抗の優勝はなかった」と言わしめるほどに高く評価されました。また、高校時代には、姉・千秋さんとペアを組んで全日本卓球選手権大会混合ダブルスに出場し、ベスト8まで進出しました。なおこの姉弟ペアは2023年の同大会で、パリオリンピックに出場した「はりひなペア」こと張本智和(琉球アスティーダ)・早田ひな(日本生命レッドエルフ)組と決勝で対戦し、惜敗したものの準優勝するという実績も挙げています。
内部進学で愛知工業大学進学後は国際試合にも積極的に参戦し、数々の大会で好成績を収めました。そしてその実績が認められて、2020-21シーズンには岡山Rに入団しTリーグデビューを果たしました。しかし、Tリーグの壁は高く、シングルスのみ4試合に出場して2勝2敗という成績に終わりました。
この苦い経験は、田中選手に海外での武者修行に臨むことを決意させました。2021年はドイツ・ブンデスリーガ1部のバート・ホンブルクに加入し、欧州でその名を轟かせていた選手を撃破するなどし、7勝3敗という好成績を残しました。
翌2022年にはフランスリーグプロAのシャルトルに入団。日本人選手のフランスプロリーグ参戦は、レジェンドでありTリーグ初代チェアマンである松下浩二氏以来となります。ここでも8勝3敗の好成績を残します。
そして2023-24シーズンには金沢Pに加入して、Tリーグへの凱旋を果たしました。シーズン成績はシングルス9勝10敗、ダブルスは3戦して全敗と物足りないものに終わりましたが、特筆すべきはビクトリーマッチ出場数が4つもあったこと。残念ながら結果は1勝3敗に終わりましたが、チームの勝敗を決する重大な局面を数多く任されたことは田中選手へのチームの期待、信頼度の高さを示すものでした。
2024年には、男子ナショナルチームのメンバーにも選ばれました。海外の選手と厳しい試合を戦ってきた経験は日本代表チームでもTリーグの試合でも必ず活かされる機会があるはずです。「世界を知る男」が日本でどう羽ばたくのか、要注目です。
田中佑汰(たなか・ゆうた)
2000年11月18日生まれ。熊本の城山ひのくにジュニアで素質が開花。愛工大名電中学・高校を経て愛工大卒。2021-22シーズンに岡山Rに入団しTリーグデビュー。その後、ドイツ、フランスのプロチームを経て2023-24シーズンから金沢P所属。戦型は右シェークドライブ型で、立ち位置に関係なく放てるバックハンドからの強力ドライブが最大の武器。
(文・江良与一)